ログハウスと猫から
私が探していたのはこの人だったんだと、
無垢に信じていた感覚は、檜のログハウスのように。
私を留めさせる。優しい顔をして囲ってくる。
香りでくすぐり安らぎを与え続ける。
でもこんな大きくて広い場所に
あなたがいない、実在しない空虚を
どうやって抱えていけばいいと言うの。
寂しくて泣き疲れて、私はソファに寝込んでいる。
あなたの愛する猫の毛をそっと撫でつけながら、
私が知らないあなたのことを聞き出そうとしてるの。
あなたの愛する猫に、一番とっておきのあなたが
買った餌をあげながら、私が知らないあなたのことを聞き出そうとしてるの。
“男の人“ って もっと怖いかと思ったの。
それを怖くないように、あなたがちょっとづつちょっとづつ、
プールの1番浅瀬から、スロープから、
ゆっくりゆっくり手を引いてくれるみたいに、
大丈夫だよ、大丈夫なんだよ。
何度でも何度でも教えてくれた。
私が立ちどまる時や、後ずさりして戻る時には、あなたは、一緒に着いてきてくれて、ペースを合わせてくれた。
あなたへの信頼から、やっとこ水に慣れることができた子供のように、私は、形無しだった。
心の中に残っている、あなたに呼ばれた私の名前が、どんなに恥じらっているか。
顔を赤らめて、隠れて、でもまた、覗き込む。
あなたに本当はもっと距離を詰めて貰えることを
期待している。
どうしようも無い憐れさがこの身を捩らせる。
八方塞がりかのように感じていた凝り固まった警戒心を、崩してくれるなんて、、、
屈服していく気持ちよさをもっと感じたい。
ずっと探していたの。
心の壁を越えて逢いに来てくれる人の存在を。
訪ねてきてくれる、諦めないでくれる、精神的に、踏み込んでくる存在を。