otogi nightmare4
自分自身を知らない…
よくよく自分の身なりを見てみると、
ゴムリの寝床に長い間いたせいで、
糞やら尿やらにまみれ、とても汚れている。
(そうはいってもゴムリのフンや尿は、一般的な動物のそれとは、少し違い、カステラの皮の部分のように単にベタベタしたものだが…)
こんな姿じゃ、鳩が通ったところで、
自分のことなんて、
目にも留めず去っていってしまうだろう…。
そんな時、とんびのように、
《ひゅるるるるる〜っ》 と鳥が鳴く声がした。
見上げると、そこには、円を描き
ずっと舞い渡る 白い鳩。
気づかなかっただけで、本当はずっと上に円を描いていたのかもしれない。
その目には涙を溜めて、
瞬きした瞬間、私の手の甲に、
その雫がひたと、煌めいた。
«お前は、もう諦めているのかもしれない。»
«でも、私はただ自分の手元にお前を抱き寄せて、助けられればそれでいい。»
«お前は、自分なんて このゴムリのところに居るのがお似合いだ。と、勘違いしてるかもしれない。»
«それこそがお前が真実だと思い込んでる嘘なのだよ。»
«お前は、こちら側の人間なのだ。»
«知りたいか?»
鳩は私の心に直接語りかける。
ゴムリは何が起こっているか知らず、
こちらを嘲笑うように眠ろうとしていた。
私は気づくと、鳩から落ちてきた煌めきの涙の上に、自分の涙を重ねていた。